「危機に立つ教師教育-課題と展望を考える」
【大会テーマ設定の趣旨】
今、日本の教師および教師教育は、未曾有の危機に直面している。
日本の教育には現在、子ども・青年の発達上の困難な課題が山積しており、大学生の低学力化、増え続ける高校中退、不登校の低年齢化の進行、「学びからの逃走」など、問題状況は深刻である。このような事態の進行を受け、とくに臨時教育審議会答申以降1980年代後半から教育改革の施策が具体的に展開され、最近では新学習指導要領による「総合的な学習の時間」の実施や、学校評議員制度の発足など、新たな状況も生じている。
しかし、このような事態の展開とそれがもたらす混迷は、日本教育史の上から見れば、新しい時代への過渡期ゆえの問題である。このような事態は、一人ひとりの教師が実践的力量を向上させるだけで克服の方向を見出すことができる状況ではなく、学校と地域の教育関係者との係わり、教職以外の人々との連携がないと展望が開けない。したがって我々の正しい姿勢は、守るべきは守り、新しい事態の展開のなかに可能性を見出すべきは見出し、研究と実践を積み重ねなければならない。
教育改革の要は、究極において教師とその実践にあると言われる。それが、社会の深部から起こっている様々な教育困難の分析に留まっていてはならず、教育改革の優れた担い手としての教師とその教師を養成するシステムの揺るぎない確立が求められている。
問題状況を冷静に見つめ分析し、各大学、地域における教師教育の実践と理論的蓄積に立脚して解決への展望を見出すことのできる学会大会にしたい。