ご挨拶
日本教師教育学会 会長 浜田博文(筑波大学)
日本教師教育学会 会長 浜田博文(筑波大学)
このたび、第11期の本学会会長を仰せつかることになりました筑波大学の浜田博文です。私は大学院生の頃から学校経営学を専門に学び、細々と研究を続けてまいりました。学校経営学というと、「校長のための指南」をする実践知群という狭い見方が未だに少なくないようです。私自身は院生時代から教師の養成・研修の在り方を自分の研究の柱の一つに据え、同時に校長の役割についても実証的研究を続けてきました。その際、中心的な価値を置いているのは「学校の自律性」です。各学校が、そこで学ぶ子ども達にとって最善の教育実践を自ら創造できる組織であるためには、教師一人ひとりの専門性を高めることはもちろんのこと、それに裏打ちされた自律性を尊重するとともに、教師を含む教職員集団の協働性を形成・維持することが不可欠だと考えています。そのような視座から校長の役割とリーダーシップの在り方を考えるというのが私の研究上の立場です。
私自身の会員歴は20年に満たない程度ですので、高野和子・前会長をはじめとする諸先輩方とは比べようのない、浅学非才の身であると自覚しております。日本の教師教育の実践や研究の全体像はもとより、本学会の活動と組織運営についても、十分に承知しているとはいえません。しかし、第11期の理事には教育学という学問の幅広さをそのまま示すバラエティに富む専門分野の方々、本学会の研究活動と組織運営に豊かな経験をもつ方々が揃っており、たいへん心強く感じております。研究推進委員会、年報編集委員会、研究倫理委員会という、本学会の基幹を成す委員会組織には、それぞれ、経験値の高い理事と気鋭の若手層の会員に加わっていただいています。学会事務局も信頼できる布陣で構成することができました。
教師教育をめぐる最近の議論や政策の動きには、危惧すべきことが多く、特に第9期と第10期には会員以外の方々との議論をするための公開シンポジウム等が行われてきました。教師教育はあらゆる立場の人にとって他人事ではない問題です。学会は学術的な手続きに基づいてそれらの問題を分析して議論し、一定の知見を生産するという使命を有しています。他方、本学会が取り扱う問題は多種多様な人々の共通関心事であり、研究上の議論や知見は適宜、公開しながら再検討することが重要だと考えます。学会内部では研究活動における学術性をさらに高めていくよう努め、同時に、学会外の様々な立場の人たちと真摯に議論を交わすことによって学会活動の公共性とプレゼンスを高めていく所存です。
会員数が1,300名に達した本学会にとって、会員の専門研究分野の多様性は重要な強みだと考えます。教師教育の実践と研究を様々なかたちで結びつけ、今後の日本の教師教育を創造していくための礎になるよう、学会活動に磨きをかけていきたいと思います。どうぞお力添えをよろしくお願いいたします。