日本教師教育学会 研究倫理規程 策定にあたって
研究倫理規程ワーキンググループ作成
(2019年9月20日 第74回理事会決定)
本学会は、1991年の設立時に掲げた設立趣旨を共通の理念とし、教師教育に関する研究を広く推進し、教師教育の充実に貢献してきた。 設立30年を目前に控え、国内においてはもとより、国際的にも教師教育への関心が高まる中で、教師教育研究を専門分野とする本学会への期待はますます大きくなっている。そこで、教師研究の中核的役割を果たすべく、2017年9月の学会総会における会員からの問題指摘を受け、研究倫理規程の策定に向けての作業を、4名の作業委員と1名の相談役から成る研究倫理規程ワーキンググループ(以下、WG)を立ち上げて開始した。
研究倫理規程WGは、本学会の「設立趣旨」と日本学術会議の示す「科学者の行動規範-改訂版-」を深く検討し、公正な社会の実現を目指す市民としての責務と、社会の発展に資する科学的、学術的な知見を産み出す研究活動の自律的な在り方を主軸におき、本学会が科学的、学術的な研究コミュニティの一員として、その中核的役割を担っていくことを、研究倫理の基本線とすることを決めた。
次に、WGは、本学会の現状を多面的・多角的に検討し、
・教師教育への社会的関心が高まり、教師研究の重要度が増している
・会員数が増加しており、教員研修の充実が求められ、教職大学院の拡充が進められている中で、この傾向は今後も続くことが予想される
・教師教育への関心をもつ現場教員が増え、実践的関心を持つ研究者が増えることが社会的に期待される中で、研究機関で十分な研究者教育を受けていない会員や研究経験が少ない会員、研究機関に所属していない会員が増えることが予想される
・複数の学会に所属している会員が多い一方、本学会が唯一の所属学会である会員が多い
・実践的な研究の要請が高まっており、その確立を推進していかなくてはならない
・学校等をフィールドとする研究が数多く行われている
等の特徴を把握した。
以上の分析から、本学会に求められる研究倫理規程の在り方として、①研究倫理の基礎基本から確認できる倫理規程であること、②研究活動を行う際に具体的に参照できるものであること、③実践的研究に求められる倫理も視野に入れたものであることの3点を重視し、新しい研究を生み出し、推進していくための「攻めの研究倫理規程」を目指すことにした。
なお、本研究倫理規程策定のために参照した他の研究機関や専門学会の倫理規程等は以下の通り。
日本学術会議「科学者の行動規範-改訂版-」、日本教育学会「日本教育学会倫理綱領」、日本教育工学学会「日本教育工学学会倫理綱領」、日本教育心理学会「日本教育心理学会倫理綱領」、日本臨床心理士会「日本臨床心理士会倫理綱領」、日本教育社会学会「日本教育社会学会研究倫理宣言」、 一般社団法人社会調査協会「一般社団法人社会調査協会倫理規程」、臨床実践の現象学会「倫理規程」、American Educational Research Association (AERA) “The Code of Ethics of the American Educational Research”、The World Conferences on Research Integrity“Singapore Statement on Research Integrity” 他。
研究倫理規程の構成
日本教師教育学会「研究倫理規程」は、「設立趣旨」の理念の下、「前文」と「研究倫理規程条項」で構成されており、「研究倫理規程条項」は四層に構造化されている。第1項は「責任の倫理」として、会員の研究に携わる社会的な責任を定める。第2項から第5項は「態度の倫理」として、会員の研究に携わる基本的な態度を定める。第6項から第13項は「活動の倫理」として、会員が基本的な研究活動に関わって留意すべき問題について定める。また、会員の研究倫理の徹底のため、第14項を設け、「学会の責任」を定める。本学会は、第14項に基づき、会員が研究倫理規程のもとで教師教育ならびに教師教育研究の専門家として適正に専門的諸活動に取り組むことができるように、継続して環境整備に努め、倫理教育や啓発活動を推進する。なお、その一つとして、第6項から第13項までの「活動の倫理」には「詳解」を付し、会員が研究活動にあたって留意すべき具体的な事項を示した。「詳解」は、会員サービスの観点に立ち、必要に応じて随時充実を図る。